シングルオリジンコーヒーが広まって、いろんな生産国の様々な農園のコーヒーがお店に並ぶようになってきました。
ただ、「グアテマラSHB」とか「エルサルバドルxxx農園パカマラ」とか言われても、
「SHBって?」「パカマラってなに?農園の名前の続きかな?」ってなりませんか?
コーヒーを仕事にしている人にとっては馴染みが深いこれらの用語も、大半の人にとっては「呪文」のような言葉ですよね?
この記事を読んで、コーヒー屋さんに行ったら、
「あぁー、これはこういうお豆ね!」って理解できるように解説していきたいと思います!
そうすると、コーヒーの楽しみ方やコーヒーを選ぶのが10倍は楽しくなると思います。
今日は「コーヒーの加工法/精製方法」についてざっくり説明していきます。
コーヒーについて話し始める前に、お米やお野菜、お肉でもトレーサビリティについて。
お肉や野菜などのトレーサビリティーはよく目にするようになってきていませんか?
トレーサビリティー???
ってなった方、
トレーサビリティとは「Trace(追跡)できる」という英語で、野菜やお肉などがどんな場所で生産され、出荷され、移動し、どのように今目の前にあるのかが、"調べようと思えば"わかるという意味です。
少し前までは、調べようと思っても、なかなか、その生産場所や流通経路はわからなかったと思います。
21世紀に入り始めた頃、結構、
地元の農協に行って、ブワーっと並んでる野菜や果物、お肉のラベルを見てもらうと、
「愛知県 xxx村 Kさん栽培 キャベツ」
「北海道 Sさん じゃがいも(男爵)」
「愛媛県 ooo町 T農園 みかん」
「三重県 U牧場 松坂牛 サーロイン」
など、どこの産地のどこの人が作ったのかが書かれていると思います。
こういうラベルを目にする機会は増えていると思います。
コーヒーも同じようにトレーサビリティがとやかく言われ、
コーヒー専門店へ行くと、ただ単純に「パナマ」という名前だけでなく、
「パナマ エスメラルダ農園 ゲイシャ ナチュラル」
と書かれたコーヒーに出会えると思います。
「パナマ エスメラルダ農園 ゲイシャ ナチュラル」
と言われるのは、呪文ではなく、
「パナマっていう国のエスメラルダ農園の方々が育てたゲイシャ種をナチュラルプロセスで精製したコーヒー豆」です
と作った人たちや品種、加工方法などと言った情報が書かれています。
コーヒーの加工法って?
コーヒーってもともと何だかご存知ですか?
正解は、コーヒーの木になる「果実の種」です!
上の写真ようなコーヒーの実を見たことある方もいらっしゃるかもしれません。
コーヒーの木は「ぶどう」のような赤い実を年に1回つけるのです。これを「コーヒーチェリー」と言います。
ぶどうと一緒で、皮の中には甘い果肉があり、その中に種が通常は2個入っています。
その種を取り出して、見慣れた「コーヒー」の姿にする工程を、「コーヒーの加工」または「コーヒーの精製」と言います。
身近な例を見ると、やはり「お米」。
秋の季節、9月10月頃に田んぼに行くと、金色の稲が風に吹かれて、たなびいていると思います。
稲も収穫した後、すぐ、お米として、ご飯を炊けるわけではないですよね。
刈り取って、乾燥させて、
石ころや他の植物、ゴミなどを取り除いてあげたり、
稲からお米を取り出して、皮を剥く脱穀だったりして、
精米して、やっと食べられるお米になりますよね?
コーヒーも同じで、
収穫して、ゴミや未熟なコーヒーチェリー取り除いて、
洗って、皮や果肉を取り除いたりして、コーヒーのタネだけにしていきます。
これを加工法や精製と呼んでいます。
コーヒーの場合、この加工方法や精製法によって、
飲み物としてコーヒーとして出された時の味わいが異なってきます。
なので、コーヒーショップへ行くと、わざわざ加工方法が明示されている場合があります。
コーヒーの加工法の種類
まず、コーヒーチェリーからコーヒーのタネをする加工法がいくつかあります。
一般的なのは、
・ナチュラルプロセス
・ウォッシュトプロセス
の2つです。
この他にセミウォッシュトと呼ばれる
・スマトラ方式
・ハニープロセス
・パルプドナチュラル
があります。
また、乾燥させる工程での乾燥の方法として、
・アフリカンベッド
・パティオ
・機械乾燥
などの方法があります。
そして最近流行の加工方法にアナエロビックという新しい方法も登場しています。
ナチュラルプロセス
これがコーヒーの精製方法として、古くから行われている方法です。
コーヒーチェリーを収穫した後、コーヒーチェリーのまま陽に当てて乾燥させ、完全に乾燥した後にコーヒーのタネの状態まで剥くというもの。
味わいの特徴としては、コーヒーに果肉の味わいが残るので、フルーティーな果実感のあるコーヒーになります。
一般的にエチオピア、イエメン、ブラジルでよくこの方法が用いられています。
もっとナチュラルプロセスについて知りたい方はこちら:【コーヒーの加工法】ナチュラルプロセスってなに?味の特徴は?
ウォッシュトプロセス
ウォッシュトプロセスはナチュラルプロセスを行うエチオピア、イエメン、ブラジル以外の国で一般的な方法です。
ナチュラルプロセスは乾燥させるまで時間が結構かかります。
その時間を短縮させるために、果肉をとった後の状態で乾燥させやすくしようというのがこの方法です。
ただ、果肉を取り除いた後、タネの周りにはネチネチしたミューシレージと呼ばれる部分があります。桃を想像してもらうと、食べ終わった桃のタネの周りにネチネチした部分がありますよね?あれを取り除くために、お水に浸けておくと、そのネチネチがとれるので、「ウォッシュト=洗った」と呼ばれます。
ウォッシュトプロセスのコーヒーはさっぱりとした酸味が特徴です。
もっとウォッシュトプロセスについて知りたい方はこちら:【コーヒーの加工法】ナチュラルプロセスってなに?味の特徴は?
セミウォッシュト
セミウォッシュトはナチュラルプロセスとウォッシュトプロセスの中間です。ナチュラルプロセス特有の果実感のあるフレーバーを持ちつつも、ウォッシュトプロセスのように乾燥を短くさせたいと思い試行錯誤されて生み出されたのが、中南米でよく見られる「ハニープロセス」とブラジルでよく行われる「パルプドナチュラル」です。
詳しいハニープロセスの説明はこちらの記事でしています:【コーヒーの加工法】ハニープロセスって何?味の特徴は?
また、インドネシア・スマトラ島で伝統的に行われている加工方法が「スマトラ方式」と呼ばれています。これは雨が多く、できるだけ乾燥時間を短くするために編み出された方法でスマトラ独特の大地を思わせる風味が特徴のコーヒーになります。
詳しくはこちらの記事で解説しています:【世界のコーヒー】マンデリンってなに?味や特徴は?
アフリカンベッド
アフリカでよく行われている乾燥の方法で、上の写真のような木組みを作り、その上にコーヒーを乗せて乾燥させます。
後ほど説明すつパティオでの乾燥とは違い、乾燥を行う時のみ木組みを設置すればよく、他の季節はその土地を他の用途に使えますし、斜面でも設置が可能です。
ただ、乾燥時間が長く、コーヒーの攪拌も手作業となるのが難点です。
パティオ
アフリカンベッドと同じようによく行われているのが、パティオと呼ばれる平地にコーヒーを置き、乾燥させるというものです。
地熱もあり、乾燥時間が短く、攪拌もトンボのようなものでできるのでアフリカンベッドに比べると時間と労力は少なくて済みます。
機械での乾燥
アフリカンベッドとパティオでの乾燥は太陽の力で乾燥させる「天日乾燥」ですが、大型の機械で乾燥させる場合もあります。
こちらは天日乾燥と違い、機械により均等に乾燥ができ、天候や昼夜を問わず乾燥を行うことができます。
嫌気性発酵
コーヒー業界で流行の加工方法にアナエロビックファーメンテーションというものがあります。
コーヒーを発酵させる際に、酸素を取り除いた状態にすることで、酸素が嫌いな微生物の活動を活発にして発酵させる方法を「嫌気性発酵」と呼びます。通常とは異なる微生物により発酵が行われるので、独特なフレーバーが生まれるため、流行となりつつあります。
詳しいアナエロビックの説明はこちらの記事でしています:【特殊な加工プロセス】アナエロビックファーメンテーションって何?
もっと詳しく知るために
加工方法ごとにコーヒーの味わいはガラリとかわってきます。
加工方法を理解して、より自分好みのコーヒーを見つけ、楽しいコーヒーライフを送りましょう!
この記事では、コーヒーの加工方法をざっと説明しました。
詳しい解説はそれぞれの加工方法の記事で紹介していますので、ぜひそちらを確認してみてください。
参考記事
【コーヒーの加工法】ナチュラルプロセスってなに?味の特徴は?
【コーヒー加工法】ウォッシュトプロセスとは?味の特徴は
【コーヒーの加工法】ハニープロセスって何?味の特徴は?
【世界のコーヒー】マンデリンってなに?味や特徴は?
水を使った安全なカフェイン除去法 スイスウォータープロセスって何?
**photos are from unsplash and Nestle Nespresso