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てる コラム

"バリスタとコーヒーの未来" 優勝した石谷バリスタのプレゼンを解説する JBC2019


今年もスペシャルティコーヒーの一大イベントSCAJ2019が幕を下ろしました!

そしてバリスタの頂点を決めるJBC2019も石谷貴之バリスタがチャンピオンの座を獲得しました。

その優勝をした石谷バリスタの競技を振り返ってみます。

JBCとは

まず初めに、JBCとはJapan Barista Championship(ジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ)の略で、日本一のバリスタを決めるバリスタ技術やドリンクの味の美味さを競う大会です。

日本大会で優勝すると、世界の代表が集ま技術を競い合う世界大会のWBC(ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ)に出場ができます。バリスタ チャンピオンシップはバリスタ界・コーヒー業界のオリンピックと言っていいと思います!

競技はエスプレッソ、ミルクビバレッジ(ラテやカプチーノ)、そして準決勝戦・決勝戦はエスプレッソを使ったオリジナルドリンクを4杯ずつ作成し、ジャッジによって技術や味わいが評価されます。もちろん、合計点が高い人が高順位です。

バリスタの競技はその他、ラテアート、アルコールドリンク、ハンドドリップなど様々な種目がありますが、一番盛り上がるのがこのバリスタ チャンピオンシップです。

詳しいJBC競技ルール等の説明は “日本のNo.1バリスタを決めるバリスタ・チャンピオンシップ(JBC)のルールを徹底解説”で詳しく解説しています!

石谷バリスタのプレゼン内容

全体のテーマ

石谷バリスタの今年のテーマは「バリスタ・コーヒー業界の未来」です。

石谷バリスタ曰く、このJBCはバリスタ・コーヒー業界の未来を示す場だと話し始めます。

最近ではどこのコーヒーショップへ行ってもゲイシャを普通に目にするようになりましたが、
数年前まではまだ珍しく2017年のJBCの決勝戦では全てのバリスタがゲイシャを使っており、JBCで行われることが少しずつコーヒー業界へと浸透していくと話しています。

エスプレッソ、ミルクビバレッジ、シグニチャービバレッジの順でドリンクを作成していきますが、
「少し先の未来」からはじめ、「どのように進化」し、「どんな未来が作っていけるのか」をドリンクを作成しながら語っていきます。

バリスタの仕事もドリンクレシピと言った大枠だけでなく、エスプレッソをつくる際のタンピング時にかける圧力と言った細かいところまでも近い未来にはオートメーション化が進んでいくと断言していましたが、

バリスタの仕事は新しいコーヒー体験を作り続けていくために、
美味しさを追求していく探究心と、新しい価値を作り続けていくクリエイティビティ
が重要で、今後ますますバリスタの役割は重要になっていくと話しているのは印象的でした。

ちなみに石谷バリスタはそんなオートメーション化を匂わすように、今回の競技でのタンピングはあえて機械で行います。

使用したコーヒー

今大会はコロンビア セロアズール農園 ゲイシャ XOナチュラルプロセスを使いました。
セロアズール農園ゲイシャはWBCでもよく使われるコーヒーです。

セロアズール農園は標高1950mと非常に高い位置にあり、この標高差が明るい酸味を生み出しています。
また、夜間は霧が発生し、これがコーヒーの成熟をゆっくりとさせ、コーヒーチェリーに糖分を蓄え、濃厚な甘さをつながります。
また太平洋に面しているので冷たい風と暖かい風がミックスし入り込んでくるため、フレーバーが十分に生成されます
そんな生育環境が美味しいコーヒーを生み出しています。

XOナチュラル プロセス

またXO ナチュラルと聞きなれないプロセスを行なっています。
この新しいプロセスを使ったコーヒーを使うことで、少し先の未来を描いていきます。

近年コーヒーの生産国では新しい味わいやフレーバーを持つスペシャルティコーヒーをつくるために品種やプロセスの研究が盛んに行われ、スペシャルティコーヒー業界の進歩は凄まじいものです。
今後、身近な店頭でも見知らぬプロセスで生成されたスペシャルティコーヒーが見られるようになるということを示唆しています。

XOナチュラルというプロセスも新しい精製方法です。

収穫し使用するコーヒーチェリーをブリックス値18度のものだけを使用することで糖度を均一にし、
25℃未満という徹底的に管理された状況で60時間発酵を行なった後、28時間天日乾燥した後、3ヶ月保管し水分含有量を安定・調整するというコーヒープロセスです。

高そうです。笑
60時間発酵を行うことでボディとフルーツフレーバーを最大化し、後半の工程で液体の透明さを生み出しているそうです。XOナチュラルプロセスを行うことで、甘さのボリューム、透明感、液体の複雑性を生み出します。

また、ミルクビバレッジのところで触れますが、このXOナチュラルによるプロセスがあるフレーバーを生み出しているのです。

エスプレッソ

エスプレッソではこのセロアズールゲイシャXOナチュラルの特性を生かし、粉量20.5gで44gの液量で抽出しています。

フレーバーはレッドグレープ、マスカット、ほのかにブラッドオレンジ、カカオ。
ミディアムボディで、スムースでラウンドなテクスチャ、クリーン・スウィートフィニッシュと宣言されます。

ミルクビバレッジ

ミルクビバレッジではエスプレッソと同じ20.5gという粉量で40gの液量と少し濃度を上げて抽出しています。これはミルクとより調和するように意図されています。

また抽出されたエスプレッソはワインを注ぐ時に使うエアレーターと呼ばれる器具を通していきます。
元々使ったエアレーターと呼ばれる器具は、デカンタのように、若いワインの味を開かせるために空気に触れさせる役目を行うものだそうです。そのワイン業界の取り組みを取り入れ、エアレーターを通すことで、エスプレッソに空気を触れさせ、香りを開くとともに、温度を下げ、甘さと質感を上げていきます。

ミルクは凍結還元90%のものを80g注いでいきます。味わいはブルーベリーヨーグルト、チョコレートアイスクリームです。

味わいの科学的な分析

石谷バリスタはこのミルクビバレッジの味わいの説明時にそのフレーバーがなぜ出てくるのかという科学的な分析を行った結果を付け加えます。

使うコーヒーの成分を研究機関で分析してもらったところ、このセロアズールゲイシャは有機酸をを多く含んでいるそうです。このため力強さを持ちます。また、ワインなどによく含まれるエステルという成分も多くあり、これがメインのぶどうフレーバーを決めているそうです。

ミルクビバレッジで出されたヨーグルトというフレーバーはXOプロセスという長い発酵時間によりフラン類・ケトン類と呼ばれる発酵物によく含まれる成分を生成していることによるそうです。

XOナチュラルの発酵の際にバレル溝にバニラと同じ成分のフェロリックと呼ばれる成分が発生しています。この成分がミルクと合わさることでアイスクリームフレーバになるそうです。またチョコレートアイスクリームのチョコレート感はコーヒーのロースト感から来るそうです。

このように石谷バリスタは感じられるフレーバーがどのように来るのかというところをコーヒーの成分分析と科学的な手法を使うことで説明していきます。
近い将来カフェで出されるラテもあえて出したいフレーバーを科学的に分析し、つくりだしていくという未来が来るかもしれないことを演出していきます。

シグニチャービバレッジ

石谷バリスタのシグニチャービバレッジは様々な業界のトレンドや手法を取り入れ、新しいドリンクを作成していくクリエイティビティと探究心をテーマにしています。

エスプレッソで提供した同じレシピで抽出したエスプレッソ4ショットをもとに、メインのぶどうフレーバーを引き立てるぶどうシロップ15g、マウスフィールを向上させるコーヒーのホエイ15g玉露5gで甘みと酸味、質感などあらゆる成分の引き立て、香りづけにベルガモットティとバニラビーンズの液体を入れていきます。

この副材料の作成に違った業界の手法を取り入れたところに石谷バリスタは自身のクリエイティビティを発揮しています。

ぶどうシロップはピヨーネとキビ砂糖を1:1の割合で漬け込み、アルコール発酵しないように10℃以下で丁寧に40時間寝かせて作成。

コーヒーのホエイはバー業界の手法を取り入れ、50gのミルクに、水出しコーヒー100g、レモン果汁5g混ぜ、2時間置いたものをペーパーフィルターで濾してできたものです。この中のタンパク質がマウスフィールを向上させます。

玉露は京都宇治産後光の茶葉8gと氷40gを90分かけてゆっくり抽出したもの。玉露には美味しさをの素となるアミノ酸をたくさん含まれており、アミノ酸によって甘みと酸味、質感などあらゆる成分を引き立てる役割を担います。

最後にベルガモットティの茶葉3g、バニラビーンズ2g、200gのお水で、90%真空にし、60度という低温で11時間煮出していきます。料理業界でよく行われる低温調理を取り入れることで、素材の酸化を防ぎ、香りを取り出していきます。ベルガモットはゲイシャ特有のフレーバーを、バニラビーンズはXOプロセスの特性を引き立てるために使われました。

このように混ぜた石谷バリスタのシグニチャービバレッジのフレーバーは一口目にライチ、二口目にレッドグレープ、カカオ、アフターにブラッドオレンジからお酒のネグローニを感じられるそうです!

飲みたいです!笑

最後に

いかがだったでしょうか?
内容が非常に濃いです。これで15分です!

スペシャルティコーヒーは出尽くした感がありますが、新しいプロセスの取り組み、科学的分析によるフレーバーの探求、他の業界のトレンドや手法を取り入れ新しい体験を生み出すクリエイティビティ。

少し先の未来から、今後進んでいくであろうコーヒー業界、バリスタの姿がなんとなくであるけど、輝き面白いと思えるプレゼンでした!

**photos are from unsplash

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